中学生の頃、好きだった色はスカイブルー。中学になって、小さい傘から大きな傘に買い換えてもらったとき、自分で選んだ色がそれだった。選んだ理由は、晴れた空の色が大好きだったから。他にもスカイブルーが好きな理由は2つあった。
当時流行っていたグループサウンズのチューリップが『ブルースカイ』という軽快なリズムの爽快な歌を作っていた。サビでボーカリストが、透き通った優しげな声で「ブルースカイ」と何度も繰り返し歌うところが、傘売り場で見たスカイブルーとシンクロしたからだろう。
それから、「青い空」というフレーズが強烈にインプットされた出来事があったからだ。
「あの人もこの青い空の下で頑張っていると思うと、ワタシも頑張れるわ」といった同じクラスで優等生の女の子がいた。えっ!?っと心底、驚いた私は、晴れ渡った青空と青空を仰ぎ見ている夢見る女の子の顔を口をあけて見ていた。
あれは、中学校の行事の一つ、登山大会のことだったと思う。山に囲まれたその地域では、体力や身体能力で選べる何通りもの登山コースがあった。学年ごとに登山コースを決めて、弁当・水筒・敷物などが入ったリュックサックをかついで登っていった。
どのくらいの地点だったのだろう。空気を吸ったり吐いたりすることも忘れそうなほど、運動の苦手な私にとって、つらい登山だった。いくら歩いても頂上に着く気がしなくて、登るコースを間違えたのかと絶望的になっていた。
前方から「着いたー!」という声が聞こえ、へとへとになっていた私も最後の力を振り絞ってゴール地点に到着した。肩で息をしている私に、優等生の女の子は優しく「大丈夫?」と声をかけてくれた。
「うん。あなたも大丈夫?」と、問いかけた時の返事が「あの人もこの青い空の下で頑張っていると思うと、ワタシも頑張れるわ」というものだった。その時の空の色が、スカイブルー。優等生が好きだった「あの人」とは、陰で「短足先輩」とニックネームを付けられていた部活の先輩だった。