本当のところ、私は卑しい本性の持ち主なのだ。純粋な人に憧れて純粋ぶるのは好きなのだが、実は醜い心を持っているのだ。たとえば、昨夜の話。
夫に向かって、「わたし、失敗しちゃったのよ、どうして父さんと結婚してしまったんだろう。一番、嫌いなタイプなのに」と言い放ってしまった。あーあ。さて、どうしよう。
夫は聞こえなかったかのように、いつもと変わらず穏やかな笑みを浮かべてテレビを見ていた。本当に、聞こえなかったのかも知れない。いや、そんなはずはない。自分の気持ちに確信の判を押すように、いつになく一語一句ハッキリと言ったのだから。
すみません。申し訳ない。いや、弁明のしようがありません。本当のことです。いえ、違います。ごめんなさい、忘れてください。などと、口にしようかするまいか、一晩悩んだ結果、まあ、いいかとそのまま放置することにした。
何故なら、何を言っても人間ってさ、自分が思いたいことしか、思わないから。何を言っても同じこと。私の言葉はふるいにかけられ、夫の思いたいことにすり替えられているはず。そんなことを考える私は、やはり卑しいのだろうね。申し訳ない。