今週のお題「ひな祭り」
女の子なら「ひな祭り」は楽しいだろうと、大半の大人や男の子は思うかもしれない。けれど、私が子どもの頃の「ひな祭り」はとても窮屈だった。我慢なしでは過ごせない出来事だった。
ほら、きをつけて。そこをさわったらだめ。だから、てつだわなくていいって、いったのよ。そこではないのよ、こっちにおくのにきまっているでしょ。もういいわ、むこうであそんでいなさい。
とても立派な五段飾りの雛人形だった。2月の天気の良い日曜日は、毎年、家族揃って雛人形を飾った。転勤族の狭いアパートの中に、五段飾りの雛人形を置くと、一気に手狭になった。ガサツでノロマな私はいつも、最後まで手伝うことは許されなかった。
きっと今、「昔はこうだったわよね?」と思い出話をしても、母親は否定するだろう。昔は昔、今は今。けれど、昔の私がいじけるのに十分な理由は、他にもあった。私には姉がいる。
このひなにんぎょうは、おねえちゃんがうまれたときにそろえたのよ。とてもよいものなのよ。
毎年、聞かされていた姉は「これは私の雛人形だけど、見せてあげる」ともったいぶって雛人形に近づかせてくれた。「ありがとう、見せてくれて」など答える訳もなく、「ううん、見ない、ひな人形なんか嫌い」と憎まれ口を叩いて、なお嫌われ者になった。
だから子どもの頃の「ひな祭り」は、とても居心地の悪いものだった。「ひな祭り」を穏やかに過ごせるようになったのは、ここ数年のことかも知れない。