最近、あそこの家のご主人が亡くなった、という話を1週間も過ぎてから、噂で知ることが多くなりました。老人が多いからではありません。
「誰にも知らせたくなかったのに、誰から聞いたのだ」
1人っきりでパートナーの死を抱え込む人が、多くなったのかも知れません。世間に、誰も拒みようのない孤独との戦いを晒してしまうのが、怖いのかも知れません。
でも、でもね、わたし、ほんとうにおせわになったのですよ。おさんぽしているときに、ときおりおあいして、おはなししていたのです。はるにははなの、なつにははなび、あきにはまつりの、ふゆにはゆきのはなしをしていたのです。
人間のつながりは個人的なものだから、子供であろうとパートナーであろうとわかりません。閉塞感のある孤独や死をそのまま1人っきりで抱え込んでしまったら、あなた自身も死んだも同然です。
ほんとうに、いいひとでした。ほんとうに、やさしいひとでしたね。ほんとうに、おだやかなひとでしたね。そんな風にポツリポツリ声を出す事によって、悲しみが生きていく力になるのだと思います。
たとえ、うらみつらみやにくしみのことばでも、からだにこもらせていないで、こえにだしてしまいましょう。だいじょうぶです、だれもあなたのことをわるくはおもいません。よくがんばりましたね、よくがまんしましたね、みんなあなたのみかたです。すくなくとも、わたしはあなたのみかたです。