いつかきっとがもう間近

ありのままの生活と夢の中

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お茶漬けの思い出

今週のお題「ひんやり飯」

いつだっただろう。まだ私が学生だった頃だから、それこそ四半世紀はゆうに経っている。学生時代にひとり暮らしをしていた時がある。仕送りのお金だけでは足りなくなって、短期間だが、バブでバイトをした。そこで、可愛い女の子と知り合った。

 

もし私が男だったなら、きっと惚れるなと思うくらい、みめかたちが可愛く華奢な女の子だった。女の子の彼氏も、これまた、涼しげな優しそうな男の子で、とてもとてもお似合いのカップルだった。

 

講義もバイトもない休日のある日、女の子に誘われて、どこかに2人で遊びに行った。どこに行ったのか、そこで何をして遊んだのか、そして楽しかったのか、全く記憶に残っていない。ただ、帰り際に、女の子が住んでいた家に寄ったことだけを覚えている。

 

小さな狭い家だった。女の子は、自然に「どうぞ~」と家の奥に案内してくれた。そこは、例の涼しげで優しそうな彼氏の実家だった。彼のおかあさんが、「おかえり~」とこれまた自然に声をかけてきて、彼は私を見て「いらっしゃい」と笑っていた。

 

「お腹がすいたんだけど」と、彼は女の子に言っていた。女の子は、「うん、待ってて」と誰に言うわけでもなく呟いて、台所に消えていった。そして、ほんの数分後に、丼と箸を手でつかんで、彼の前に置いて「どうぞ」と言った。

 

丼の色は、黒だった。その中には冷ご飯が入っていて、上に焼き鮭・三つ葉・あられ・きざみ海苔・ワサビ・氷が載っていた。『永谷園』の『お茶づけ海苔』しか知らなかった私は、女の子の作ったお茶漬けを今でも鮮やかに思い出せる。

 

「お茶を入れているの?」と聞けば、怪訝な顔をして「和風だしと水よ」と女の子は答えた。女の子にすれば当たり前すぎることなのだろう。でも、私には粉末のダシと水道水をご飯にかけるとは、カルチャーショックだった。

 

それから、女の子とは疎遠になってしまった。私がバイトをやめたせいだから仕方がないのだが。けれども真夏に冷やし素麺を食べ飽きて、何か冷たくて美味しいものが食べたくなると、女の子が作ったあのお茶漬けを思い出すのだ。あの時、私も食べたいと言えば良かったと、いまだに後悔している。

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