いつかきっとがもう間近

ありのままの生活と夢の中

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ある女の子の話

私は人と接触するのが苦手です。だから、若い頃でも、デパートの化粧品売り場で、メイクを教えてもらうことさえ避けていました。

 

他人と触れ合うのが苦手なので、昔からフォークダンスが憂鬱でした。気持ちがどんよりして、どうしよう、どうしよう、と戸惑っている愚鈍な子どもでした。

 

けれど、大人になって何十年も経過すると、そんなこともあまり気にしなくなるものです。

 

今日、美容院にいきました。ここ最近、同じ美容院に通っています。担当スタイリストは30代の女性で、とても気さくで、明朗に話しかけてくださるので、安心してお任せできます。

 

その美容院に、新人の女の子がいて、シャンプーをしてくれました。

 

その女の子は、二十歳そこそこで専門学校を卒業して間もない様子でした。まったく浮ついた感じはなく、静かに丁寧に、眼だけで笑えるおとなしい女の子でした。

 

シャンプーが終わると、鏡の前に導いて軽くマッサージをしてくれました。女の子の長い髪が左右に分かれて、三つ編みにされているのを鏡越しに見て、今は「令和」なのに「昭和」の匂いのする子だなと思いました。

 

着ている服装もスタイリッシュとは思えないけれど、どこか堅実で、清潔感に関しては、他の人よりも際立っているように思いました。

 

その女の子の細い指の感触は、私の頭から首筋、そして肩から背中にかけて正しく的確に快感にいざなっていきました。

 

目を開けると、女の子は穏やかな笑顔のまま、マッサージを終えるために、両手が私の肩をなで下ろそうとしていました。

 

そのとき、私はようやく気がつきました。その細い指先には、沢山の絆創膏が貼ってあり、手首から先は薬品やけでも起こしているのか、痛々しいほど赤くなって荒れていました。

 

自らの痛みさえ厭わずに、美容師になりたいという強い意志をもつ女の子がいることに、新鮮な驚きを抱きました。すごいなぁと感心しました。

 

きっと、あの女の子は美容師としても人間としても素晴らしい人生を歩むのでしょう。私は自分の小さな殻の中から、他人との接触を拒むことしかしなかった過去を思い返して、ため息をつくしかありません。

 

志のある人は、語らずともわかるものですね……。

 

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