昔はねぇ、裏山のイチジクの木に登って、口の端っこが切れて血が出るほど、イチジクを食べていたものよ……
という昔話か自慢話かを聞かされて育ちました。
私が知っているイチジクは、店の棚に透明パックに詰められたものです。
それを購入してから、冷蔵庫で冷やした後、水でキレイに洗って、お皿にのせます。手もキレイに洗って、皮をむいて食します。
自称貧乏な家にもかかわらず、4粒しか入っていなかった高級品のイチジクを気前よく一度に全部皿にのせて、先の言葉を聞かされていました。
だから、全部アンタが食べていいのよ、イチジクが大好きなのだから……
嬉しいような、けれども居心地の悪いような、そんな記憶がイチジクにはあります。そのイチジクの苗木を植木鉢に植えました。
録画していた『趣味の園芸』で、いとも簡単そうに植えていたので、気楽に植えてみました。1年目は実らず、2年目は5個だけ実を残して、3年目に30個の実をつけるのを目標としています。
コンクリート上の植木鉢なので、絶対、登ることはできないけれど、裏山のイチジクは記憶から淘汰されるかもしれません。