いつかきっとがもう間近

ありのままの生活と夢の中

「スポンサーリンク」

山の紅葉

10代の頃、住んでいたアパートの5階の窓から、遠くに山が見えました。その手前には美しい塔がそびえたっていました。私のお気に入りの景色でした。

 

絵を描くのが好きだったので、窓から眺めた風景を油絵の具で描きました。深緑色の山と美しい塔に見守られた平和な町並みを描いていました。

 

夏休みの終わり頃に絵筆を持ったので、描き終わる前に学校が始まってしまいました。描きかけのまま、季節は変わっていきました。

 

ある日家に帰ると、父親が私の描きかけのキャンパスに絵筆をふるっていました。私を見て悪びれたふうでもなく、「いいだろう?」と悦にいっていました。

 

それを見てショックだったのは、何よりも丁寧に描こうと思っていた塔の、窓枠と窓を黒塗りにされたことでした。

 

そして、豊かな深緑色の山で、静けさと安らかさをイメージしていたのですが、紅葉してお祭り騒ぎ風の山に変わっていました。

 

けれど父親の嬉しそうな顔を見ると、何も言えませんでした。

 

その町を離れてから何年か経った頃、あの美しい塔が火災で消滅したことを知りました。住んでいたアパートも時代の流れで、取り壊されたことをそのもっと後に知りました。

 

父親が仕上げた絵は、実は今でも実家に飾ってあります。いまだに、上手く描けた自信作として、自慢しているのです。その度に、小さな溜息がこぼれてしまいます。

プライバシーポリシー 「スポンサーリンク」