今週のお題「お気に入りのTシャツ」
もう一昔前の話ですが、夏になるとTシャツを買っていました。
ショッピングモールに出向くと、Tシャツ専門店にまず立ち寄り、あれやこれやと空想を巡らせながら、見て回りました。
あの子が好きな柄、好きな色、好きなサイズ。それは、すべて、あの子が喜んでくれるはずだと空想した好きそうな柄、好きそうな色、好きそうなサイズでした。
選んだTシャツが入った紙袋を部屋のノブに引っ掛けて、「いいのがあったのよ、着てみてね」と外から声をかけていました。
何日か過ぎてから、洗濯物の中に選んだTシャツが紛れ込んでいた時は、胸の内で小さくガッツポーズをとっていました。
そんなあの子も大人になって、他人行儀なほど、感謝の言葉を口にするようになりました。けれど、ダンマリを決め込んでいた当時のあの子に、訊ねてみたいと今でも時々思います。
そのTシャツ、気に入った?