今週のお題「運動不足」
昔から運動というものが大嫌いでした。たぶん機敏に動ける体力と筋力が年相応に備わっていたならば、これほど運動嫌いになることはなかったのかも知れませんが……。
運動好きになっていたかもしれない出来事が、幼稚園時代に2度ありました。
私の通っていた幼稚園では、園庭を入るとすぐ横に、鉄棒が備えつけてありました。理由はわかりませんが、その幼稚園では小学生になるまでに『さかあがり』をみっちり教え込むのが習いでした。
お友達が次々と『さかあがり』をクリアしていくのをぼーっとした頭で眺めながら、シスターに励まされるがまま、毎日、黙って練習していました。私が嫌がっても嫌がらなくても、「もう、『さかあがり』はお終いにしましょう」と言ってくれるはずがないことは、幼心にもわかっていました。
ある日、いつものように練習していると、「できたじゃないの、すごいわ」と物静かなシスターの、珍しく高揚した声が聞こえてきました。
その『さかあがり』から数ヵ月後の幼稚園、最後の運動会で、障害物競争に出場しました。足は今も昔も、どちらかといえば遅い方で、それよりもなによりも、『競争』という概念が理解できていませんでした。
速ければ良い、ということをまだ誰からも教わっていなかったのです。よーい、ドン!という声が聞こえて、網をくぐったり、橋を渡ったり、トンネルを潜ったりすることが楽しくて、笑いながら走っていたような記憶があります。
いつもならビリかその前くらいの順位のところ、その時は2位でした。スゴイじゃないの、と身内はビックリしていました。
すごい、スゴイ。この「すごい」という言葉を誤解していたのかも知れません。きっと、褒めてくれていたのでしょう。それが、よくわからなかったのです。
「ヨカッタね」とか「うまくいったわね」とか「がんばったね」とか、他の言葉をかけてもらっていたら、もしかすると、成功体験として運動をもう少し前向きに捉えていたかもしれません。
運動嫌いの自己弁護に、おあつらえの思い出話しができて、今は満足していますが。