いつかきっとがもう間近

ありのままの生活と夢の中

坂道の少年

閑静な住宅街のバス通り、交差点で信号待ちしていました。人も通りません。車も通りません。夏の昼下がり、誰も外には出かけないようです。

 

そこへ坂道を駆け下りてきた一人の少年がいました。白いガードレールが道路と歩道を分けているとはいえ、転べばでんぐり返りを何度もしそうな坂道です。危なっかしいし、こんなに炎天下に帽子もかぶらずに、少年はいったいどこに行くんだろうと思って眺めていました。

 

すると少年は転びもせずに、信号機のそばの自動販売機の前で足を止めました。そして2歩くらい後ずさりして、真剣にそのディスプレイをみつめはじめました。両手をギュッと握って、きをつけ! の姿勢で熱心にみつめていました。

 

最後まで眺めていたかったのですが、長い信号待ちの時間は終わり、少年を見届けることはできませんでした。

 

「喉、乾いた。何か冷たいもの、ある?」

「あら、ごめんごめん、麦茶を冷やすのを忘れていたのよ」

「そう……」

「あ、そうだ。下の自動販売機まで行って、ジュースでも買っていらっしゃい。母さんと父さんのコーヒーもお願いするわ」

「やったー! 」

 

少年のたたずまいから、そんな会話を想像しました。

 

コーヒーの種類が沢山あり、微糖なのかブラックなのか、お母さんに聞いてくるのを忘れて困っていたのかも知れません。少年の飲み物をコーラにするかメロンソーダにするか、迷っていたのかも知れません。

 

少年の細い手で、3本もペットボトルが持てるかしら? 帰り道に1本落として、コロコロと転がっていくペットボトルを見て、泣いていないかしら? など、想像が尽きません。いつまでも、心に残る可愛らしい眺めでした。

 

 

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